結局、松下電器は二〇〇四年夏ぐらいまでに実質二二〇〇台ぐらいしかシグマブックを出荷できなかったようだ。関係者がそう明かしていた。二〇〇五年一〇月には出荷は中止になった。東芝も。シグマブックと同じメモリカードを使って端末を発売したものの、ほとんど話題にものはらなかった。しかし、松下電器はまだあきらめてはいなかった。二年後の二〇〇六年七月におこなわれたブックフェアで次世代の電子書籍端末を参考展示し、その年の終わりには「ワーズギア」と名づけた第二世代の読書端末を発売した。シグマブックはモノクロの見開き画面だったが、ワーズギアは一面の高解像度カラー液晶を使い、連続して閲覧できるのは約六時間だった。シグマブックが単三電池二本で三−六力月持つという触れこみだったから、まったく違うコンセプトの端末だった。重さは文庫本二冊ぐらいと軽量だったが、表示部分は黒が基調の真四角で、それに円柱の握りがついていて無骨な感じがした。デザイン的には、明らかにソニーのリブリエのほうが上だった。第一世代の失敗で簡単にあきらめなかったことに執念は感じられたが、松下電器は、はたしてどういう成算があってこの第二世代の端末の発売に踏み切ったのだろうか。まさか軽くてカラーにすればうまくいくと思ったわけではあるまい。率直に言って、私にはよくわからなかった。価格はシグマブックとほぼ同じ四万円ほどだった。携帯電話にお金を使ってしまっている若い世代が、廉価な電子書籍を読むために四万円も払うとはやはりとても思えなかった。しかし、あきらめないことにおいてはある意味ソニーも同様だった。日本でリブリエは数千台しか売れなかったと思われるが、二〇〇六年九月末アメリカで「ソニー・リーダー」と名づけた読書端末を三五〇ドルで発売した。表示の仕様なども含めて日本で発売したリブリエとほぼ同じで、縦の長さが少し短い程度の違いだった。ただリブリエではメモを書き加えることができたが、このときアメリカで発売したソニー・リーダーではできず、検索や、目次・索引からのジャンプもできなかった。「皮肉なことに、紙の本のほうが情報を見つけやすい」と、オンラインーマガジンの「スレート」誌は酷評した。日本のリブリエのコンテンツはレンタルで読める期間がかぎられていたが、アメリカではこうした方式はとらず、ダウンロード販売をした。デザインのよさや電子ペーパーを使った表示の美しさについては評価されたが、ビジネスとしての成功については疑問の声もあがった。
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