底引き船は九月の初めから沖に出て操業しているが、ズワイガニの資源保護のために、カニの水揚げは十一月六日から。したがって、九月の操業開始から力二の解禁日までは、もっぱら沖ギス(ニギス)やカレイ類を採る。今年は、笹ガレイ(ヤナギムシガレイ)が珍しく多い。この間、底引き船の船頭は冬の味覚の王様、ズワイガニの解禁日を待ちわびて、ここ数年のカニの採れ具合から、来る漁模様を皮算用する。九月からの魚採りで、水揚げはできないが、たまに網に入ってくるズワイガニの量、雌雄の割合、大きさなどの様子から、船頭の皮算用は日増しに現実化して熱気がおびてくる。そして、いよいよ解禁日、長年の経験で得た「情報の処理」を自分なりの頭でこなし、魚採りから力二採り用の網に漁具を整えながら一番網の入れ処を想定する。